道士郎でござる by西森博之 週刊少年サンデー


今回のレビューは、俺が最も敬愛する、「今日から俺は!!」「天使な小生意気」の作者、西森博之氏の「道士郎でござる」です。

一発変換できなくて辛いが頑張りたい。

 

「道士郎でござる」は、2004年に連載開始した、天こな終了後の期待作であった。

なんと主人公は武士。イメージは天使な小生意気の小林をさらに侍らしくした感じ。

おそらく西森氏は、天こなの頃から「武士を描きたい」というような願望があったんだろうと思う。

主要キャラの中でも小林を贔屓してた感じもするし、クライマックスでの坂月サンの大活躍っぷりからそう感じた。

坂月サンかっこよすぎるし。

内容はやはり学園モノであり高校生活モノでありケンカありシリアスありのギャグ漫画。

ネバダ州で育てられた少年、桐柳道士郎(15)がなぜかちょんまげにハカマ姿の武士となって日本に帰ってきて、愉快で個性的な仲間達とドタバタ学園生活を繰り広げる痛快コメディーである。

が、惜しまれつつ全8巻で終了した。

 

西森氏の新連載が始まると聞いて、俺はサンデーを立ち読みするためだけに本屋へと向かった。

武士が主人公という事でどんな奴かなーと思ったら、なるほどこういう奴かという印象。

予想は裏切られたがいい意味で期待も裏切られたという感じ(自分はもっとシブめでちょんまげもモロ江戸風な、まさに「武士」って感じのものを想像していた。2巻の健助の「道士郎の親想像図」みたいな感じの。今思えばそれだったら嫌だなぁ)

そして小坂健助登場。この頃の健助はまだ好きになれなかった。

藤木よりも普通な、あまりにもパッとしない少年。

そしてその後、早乙女登場である。当然の如く道士郎にケンカを売る。

西森漫画お決まりのパターンを早速第一回でやってくれるとは・・

そしてバトル開始。

道士郎強すぎ!!

とにかく強い。三橋・伊藤・恵・源造、歴代の主人公全てを網羅する強さだった。あのゴツイ奴を体当たりだけで一発とは。

そして第一話を読み終わる。

なんだか呆然としてしまった。まるで嵐のような時間。

だが、妙にこの漫画に対する期待感が生まれた。なんだかよくわからないが続きが気になる、これからこの武士達がどんな展開を繰り広げるんだろうか、この小坂健助という普通の少年も成長していくのだろうか・・

この期待感は、やはり西森氏の漫画だから絶対の信頼を置いていたというのが強かったから持てた期待感だろう。

そしてその期待感は間違っていなかった。やっぱり西森博之の描く漫画は飛び切り面白い。

何度でも読み返したくなる魅力がある。

 

それではこの漫画の面白さや魅力とはどういう所に詰まっているのか。

絵柄はやはり天こな風味。今日俺の頃の絵柄にはもう戻らないんだなぁ・・としみじみ思ったが

天こな程少女漫画チックではない気もした。むしろ演出とかも上手くなってるし

女の子の描き方とかも上達している。なんというか、凄くかわいく描けるようになったと思う。

ギャグも、今日俺や天こなに比べるとやや劣り、多少のしつこさを感じる場面もあるのだが、笑いのレベルは相変わらず高い。

西森氏の専売特許、個性的なキャラは今回も魅力満点。

どうしようもない脇役にまで魅力を持たせてしまう力はやはりお見事。

特にこの漫画は、初登場時はひどい悪役っぽかったのに、後に凄くいい奴になるというケースが多く、その描写があまりにも自然なのが素晴らしいのである。

開久D組の連中が代表的な例。

悪の巣窟のはずなのにもう皆全然悪い奴に見えなくなってくるという。

池内なんかはもう最初すごいガラ悪かったのに、後にお笑い主要キャラになるという不思議な奴だ。

それにこいつら、実はすごく仲間思いな所が素敵である。

どうしようもない悪の巣窟の生徒だからこそ、佐東が、健助が実は弱いと知ったのに「俺、一生ついて行きますよ」と言い切った事や、細波が天井から現れて健助を守るというシーンは感動する。

最も注目すべくは、芝山、達吉、早乙女だろう。

芝山は物凄く顔が怖い上にナイフを突き出したり財布盗難事件を勃発させたりと、まさに最強の悪的な存在だったのが

後に道士郎によって、完全に更正はしないが少しいい奴に見えてくるという。

不良のガキの家に上がり込んで無理矢理更正させる話は爆笑ものだが、悪ながらにカッコ良さを感じるいいシーンである。

そういう所からも、芝山はかなり好きなキャラクターである。

達吉も、どうしようもない不良から、正義を貫く不良(?)へと成長する過程も素晴らしい。

最後に早乙女。この男は、個人的にこの漫画で最も好きなキャラ。

すっごい険しい怒り顔で登場したものの、道士郎に軽々とふっとばされるという情けない登場シーンを飾った早乙女。

が、この早乙女が徐々に健助と道士郎に心を開いていき、一緒に事件の解決に挑んだり、一緒に退学になって一緒の学校に転校することになったり、時にはボケを連発したり、時には凄くカッコいい事を言ったり、そして健助を完全に認めるようになったり・・

ここまで劇的な心の変化を見せてくれた男も珍しい。

何といっても、顔が違う。一巻では「今井とか源造に比べると魅力の無い顔だなー」と思っていたのが、3巻あたりになってくると物凄く男前に見えてくるのだ。マジでカッコいい。

心の変化といえば、最も大きな成長を遂げたのが健助だろう。

正直言って、最初の頃の健助は全く好きになれなかった。

その一番の理由は、何か特筆すべきものが感じられなかったからだろうか。

例えば、今日俺の良くんは、小柄で弱いが正義感が強くて、弱くても悪者に向かっていける根性を持っているカッコいい奴だった。

天こなの安田は、やはり小柄で弱いが「変態」という絶対的地位を持って存在を確立していて、しかも頭が良く、時折その変態パワーによってスキの無い神業やド迫力を見せたり、実はメガネを取ったら美形だったりと、やはり何かとカッコいい奴だった。

だが健助は、小柄でやはり弱く、見た目も普通でケンカも避けていてあまりにも良い所なさそーな感じであった。

それに何かと色々考えすぎるキャラであり(「すぐ悩むキャラ」は実は西森漫画の殆どがそうだったりするのだが)、
なんかやたらと道士郎の破天荒な挙動について感情豊かに、過剰に模索する所は結構読んでて疲れる事もあった。

その健助が、道士郎やエリカ、早乙女に出会ってから徐々に変わっていき、最終的にはもはや別人となる様は圧巻。

健助の成長の最も大きなきっかけとなったのは、開久の存在だろう。

本当は弱いのに、様々な誤解によってクラスの奴等に「健助殿」と尊敬され、級長に仕立て上げられ、それによって多くの悪者と対峙することになる。そして驚く事に、小柄でよわっちい健助は結果的に勝利を収めていく事になるという。

生まれてからケンカなど全くした事の無い健助が、怖がりながらも冷静に状況を判断し、あらゆる手を駆使しながら不良達に立ち向かっていく。腕力も全く無いのに。ここにこの漫画のバトルの面白さがある。

西森漫画の凄い所の一つは、ワンパターンのように見えてワンパターンでは無い事だ。

例えば冒頭で言ったように、この漫画の大まかな内容は学園モノであり高校生活モノでありケンカありシリアスありのギャグ漫画。

で、天こなも学園モノであり高校生活モノでありケンカありシリアスありのギャグ漫画。

で、今日俺も学園モノであり高校生活モノでありケンカありシリアスありのギャグ漫画。
※ここではあえて「甘く危険なナンパ刑事」「スピンナウト」の話題は外しておきます。

総じて不良やチンピラがわんさか出てきておまけにヤクザまで出てくる。

戦闘シーンは殆ど悪者とのケンカ。もしくは不良同士のケンカ。

漫画の内容のほぼ8〜9割はケンカというのが西森漫画クオリティ。

それなのに、その戦闘シーンがどれもワンパターンにならない。必ずどこかにドラマがある。心に残る名台詞がある。

そして、どれも似たようなジャンルでありながらその漫画ごとの「特色」があり、決して同じような内容の漫画にはならない。

今日から俺は!!は不良二人が高校生活を送りつつケンカを繰り返したり色んな事件を解決したりといったドタバタギャグ漫画とでも言えばいいだろうか。西森漫画の典型と言った感じで、なんでもあり感が最も強い。現実味も一番高い。

天使な小生意気は今日俺から一転、魔法によって男の子から女の子になってしまった天使恵が主人公というちょっぴりファンタジー風味な漫画。ギャグのタイプもそういった設定を利用したものが多く、オリジナリティーの高さが魅力。キャラも個性的。
ただ、後半は抽象的な発言や複雑な設定が多くて難解な点もある。

道士郎でござるは武士が主人公という少々非現実的な設定だがファンタジーではない。が、ハチャメチャぶりは一番。
いきなり学校を4人一緒に退学になったり、巨大な馬が庭に来たり、どうしようもない悪者高に編入したのに意外とみんないい奴だったり、変な絵本を描いたりと他の学園モノ漫画には無いような奇行や珍事件が目立つ、物凄い漫画である。
戦闘シーンでは圧倒的に主人公が勝つという珍しいタイプの漫画。

改めて読むと本当に凄い漫画だ。とにかくやる事が普通じゃない。

キャラも例えば、今日俺の今井、天こなの源造、道士郎の早乙女というようにタイプが似ている主要キャラがそれぞれ出てくるのだが、やはりワンパターンにならずそれぞれ違った魅力がある。

何より最もオリジナリティを貫き通していた存在が、主人公の道士郎である。

武士と聞いて連想するのはちょんまげ、ハカマ、刀などだろう。

だが道士郎はその「お約束」に甘んじているだけのキャラではない。

ネバダ州で育てられただけあって英語が話せたり、洋服も着てみたり(というより着させられた)、わりと天然だったり、何かと表情が豊かでかわいかったりとおよそ武骨な侍のイメージとはかけ離れた一面を多くみせてくれる。

逆に喋り方や信条、キレた時の般若のような顔、尋常じゃない強さなど、しっかりとした侍の一面も見所で面白い。

 

それだけに、この面白い設定を最大限に生かせぬまま短い期間で終了してしまったのが非常に惜しい。

後半はなんというかほぼ健助とエリカが主人公のような感じで、本来の主人公である道士郎があまり目立っていなかったと思う。

西森氏もその辺は想定していなかったかもしれないが、目立てなかったのはそのバランス無視の強さのせいだろうか。

それ以外にも早乙女とヒロミの進展などまだまだ見たい所もあったし、とにかく面白い漫画だったので、

コミックス全8巻という中途半端に短い連載はとても残念だった。

そもそも何故こんな面白い漫画がこんなに早く終わる形となったんだろうか?

サンデーは読んでないからよく知らないがこんなに面白い漫画に人気が無かったとは到底思えない。

そういえば天こなも途中から、なんとなく最終回に向かって急いでるような、作者が疲れてる感じが見受けられたのだが、

道士郎もそうだったのだろうか?西森氏自体に問題が?

よくわからないが、できる事なら何らかの形で再開してほしいものだ。

きっと多くの人がそれを望んでいると思う。

あと、この漫画を読んで「西森博之の新連載が始まったら何があっても絶対コミックス買おう」と改めて思った。
やはりこの人にハズレは無い。

あと、道士郎と健助の関係って少しドラえもんに似てるな。押し入れの一件でそう思った。

あと、西森氏はいつからドラゴンボールファンになったんだ?なぜかこの連載から急にDBネタが要所要所で入ってきて驚かされた。しかも「ドラ○ンボールの世界では小さい奴が一番強いんだぜ」「舞空術も学んでないし」とかやけにマニアックで笑わされた。いいのか集英社ネタ連発。

ハッ!?もしかして、小学館に愛想を尽かしたって事なのか・・?だから8巻で終了・・!?


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